エチオピアがわかる本:福井勝義『認識と文化』感想

2020年11月17日

日本のエチオピア研究の第一人者とも言われる福井勝義先生の書籍です。

この本は1991年に出版された本なのですが、今でも新鮮な発見がある本です。

福井先生がエチオピアのボディという人々を研究する際に、どのようにフィールドに入り、どのようなことに悩んで、ボディの人々の色の認識について研究をはじめたのか経緯がよくわかる本です。

福井先生の体験記のようなかたちで調査と、調査で明らかになった点が綴られていくのでなかなか面白い内容となっています。

フィールドの入り方は、ゆっくりと自分のテントをボディの人々の住まいに近づけていくとか、一年目にボディの人々の名前を聞いて書き取ったものの、次の年に訪ねると、前年に聞き取った名前は全て嘘だったということがわかった、とか、なかなか笑えるお話もあって楽しく読むことができました。

非常に参考になった点は調査方法が非常に詳細に書かれており、また分析方法、分析結果も詳細に示されている点でしょう。

アフリカでフィールドワークを行おうとしている人々、または人々の認識について調査や研究を行おうと考えている人々にとっては手引書として利用することも可能な本ではないでしょうか。

まず、ボディの人々が色をどのように認識しているのか、という調査からはじまり、そのうち研究テーマが模様、牛、ボディの社会全体へと広がっていく、という部分は非常に面白いです。

そして、最初の色の認識というテーマが、実はボディの社会の中で非常に重要である牛と関連していて、その話が社会制度や儀礼へと展開していくので、ワクワク、ドキドキする本です。

フィールドワークを行う際には次から、次へと出てくる発見を、無視せずに、丁寧に取り扱って、その発見から更に疑問が生じていくものであると改めて感じさせてもらいました。

学術書ではあるのですが、退屈せずに引き込まれる本です。