エチオピアがわかる本:『獅子は倒された エチオピア革命と愛』(ユゲット・ペロル)
エチオピアのことを知らない人が読んだら単なる、遠い国のフィクションにしか思えないようなお話ですが、皇帝ハイレ・セラシエが統治するエチオピア帝国の最期に、人々、特に若者がどのような感情をいただき、何を考えていたのかが描写されています。
著者のユゲット・ペロル氏はチュニス生まれのフランス人で、その後在日フランス大使の夫人として日本にも滞在された経験があるとのことです。
さて、この小説が史実にどれだけ忠実なのかはよくわかりませんが、帝国に対する反発と革命時の混乱や人々の動揺、感情がある程度は伝わってくるような気がいたします。
ただ著者がフランス人でありながら、登場人物はエチオピア人なので本当のところがどうなのかはちょっと微妙かもしれません。
この小説の最期は、活動家の青年と女性が一緒に鉄道を使って逃げようとするのだけれども、結局青年はあらわらず、女性が一人で逃げるというエンディングになっています。
この女性はエチオピア人の女性として描かれているのですが、もしかしたら著者の実体験なのかもしれません。
つまり、活動家のエチオピア人青年と恋人関係にあった著者がその青年から聞いた話や自分の体験を綴っていると想像すれば、相当な説得力のあるお話であるような気がします。
また、皇帝ハイレ・セラシエに従えていた人々の窮屈さや、言論の不自由さがしっかりと描かれているのも、もしかしたら外国人であったために、そのような人々と接触ができたと考えられるかもしれません。
印象として、皇帝の周りにいる人々の時代錯誤的な意識と感覚が若者の世代と対立する構図がうまく描かれているように感じました。
エチオピアの革命がもちろん富裕層に対する貧困層、一般市民に夜叛逆とも考えられるのですが、古い考え方と新しい考え方の衝突というのもこの小説には盛り込まれています。
この本を読んでいて気になったのは革命とエリトリアの独立の関係でした。
皇帝に忠実だった人々がエリトリアに逃れ、革命後の政権に反対して反旗を翻したようなことがほのめかされています。
実際はどうだったのでしょうか。
フランス人が書かれた小説のせいか、最初は展開がゆっくりで、ちょっと退屈な感じがします。
しかし、途中から若者のあつい感情が描写さられるようになり、ドキドキしながらエンディングを迎えます。
エチオピアの革命時を知る貴重な資料なのかな、と思いました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません