Qeerrooって何?エチオピアを動かしたオロモ人青年組織の正体
英国の新聞、The Guardian(ガーディアン紙)が、エチオピアで活発に抗議活動を行っているオロモ人青年の組織、ケーロー(Qeerroo)について書いていたので訳してみました。
「自由」:エチオピアを停止させた、謎につつまれた組織
現在、銀行員として働くデサレンは、ケーロー(Qeerroo)の一員だった。ケーローとはエチオピアの最大民族、オロモ人の活力に溢れた未婚の男性たちのことである。彼らは、「人々を守る責任」を合言葉に結束している。
デサレンは結婚したあと、彼の年代の多くのエチオピア人がそうするように、彼もまた、政治活動からは距離を置いていた。2月12日までは。その日、彼はアダーマやオロミア州の街に住む人々がそうしたように、独裁政権の終焉と反政権のリーダーたちの釈放を求めたストライキに加わった。
エチオピアの中央政権を機能停止に追い込んだ、3日間のボイコット運動は、アダーマを拠点に活動する、影響力のあるオロモ人政治家ベケレ・ゲルバ(Bekele Gerba)の釈放により2月13日に終止符を打った。その後、2日も待たずに追い詰められたハイレマリアム・デサレン首相は辞意を表明した。震撼する中央政府は2月15日に非常事態を宣言した。
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デサレンは、アダーマでのストライキを「国家全体に及ぶ操業停止(total shutdown)だった」と語る。「行政も含めて、ほぼ全員がこの活動に携わった。ストライキ中は靴磨きの少年さえ、街の中で見ることはできなかった」。彼も含めて、首都アディス・アベバから南東90kmに位置する普通であれば静かな街、アダーマに住む人々のほとんどが、2014年からオロミア州やその他の地域にまで拡大していた暴動に加わった背景には、ケーローの活動があった。
ケーローとは一体誰なのか、彼らはいかにしてアフリカで最も強大な独裁政権を屈服させたのかは明らかになっていない。オロモ人の伝統文化では「ケーロー」とは若い未婚男性のことを意味する。しかし今日、「ケーロー」という言葉は、政治的自由と民族的代表を手に入れるためのオロモ人の活動や、新しいタイプの積極的なエチオピア人青年を意味する。
「彼らは人民の代弁者である」とアダーマでタクシー運転手を営む32歳のデベラは話す。ケーローに入るには高齢の彼だが、彼はケーローの信念を応援している。
「彼らはオロモ革命の前衛だ」
「ケーロー(Qeerroo)」という言葉の「復活」はオロモ人アインデンティの歴史を物語っているようでもある。オロモ人のアインデンティティは1994年にEPRDFが政権を握り連邦制となってから、急激に強固なものとなりつつある。
「過去には、オロモ人として見られること自体が犯罪という時もあった」とデサレンは話す。帝国と社会主義政権に推し進められた民族同化政策時代の話である。
「でも、今、人々はオロモ人であるということを誇りに思っている。だから、ケーローが強くなっているんだ」。
オロモ人の活動が誇りを持って拡大するにともない、社会に不安を持つ人々を組織化しはじめたケーローは、次第に行政官の注目を集めるようになった。今年の初め、警察はケーローは国内情勢を不安定にし、地方政府を制圧する秘密組織であるとして、ケーローに対して断固とした処置をとると発表した。現在の与党支持者はケーローはテロリストである、と批判している。
多くの人々はケーローがこのように語られることに違和感を感じている。しかし、ケーローの潜在的な勢力について疑う人は稀である。昨年末に首都の範囲を超えて携帯インターネットのラインが利用できなくなっていたが、去年8月に非常事態宣言が解かれて以降、ケーローのネットワークは、オロミア州で生じた数多くのストライキ、抗議活動を支えてきた。
反体制派のリーダーであるベケレ・ガルバは、彼の釈放はケーローの活動の成果であると認めている。しかし、彼もまたケーローがどのように組織化されているのか、わからないという。
「私が彼らを意識しはじめたのは、本当に最近のことである。誰がリーダーシップを取っているのか、そもそも中心的な人物がいるのかどうかさえ、我々はわかっていない」。
しかし、最近行われたガーディアン紙のインタビューに対して、アダーマで活動する二人のリーダー、ハイレ(仮名)とアバイエ(仮名)はケーローの活動について語った。
20代後半のこの二人のリーダーによると、街の区画一つ一つにケーローのリーダーが所在し、少なくとも20名以上の部下を指揮しているという。近日起こるストライキの情報やメッセージを拡散する義務が、彼ら全員に課せられている。
二人のリーダーによると、この数ヶ月彼らのネットワークは随分と向上したという。オロミア州全体をとり仕切るリーダーが一人しかいないにもかかわらず、階級的な指示系統がしっかりしてきたという。
「この仕組みは我々を鍛えてくれるし、我々の主張を統一することができる」とアバイエは語る。
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彼らの仕事はインターネットが使えないと困難である。「ソーシャル・メディアを使えば、メッセージは一瞬で拡散できるが、今は各世帯の扉を叩き、2週間ほど要する」という。現在、彼らはWhatsAppやFacebookを使うのではなく、チラシを主に大学のキャンパスで配布している。インターネットが使えなくなっても、アメリカ合衆国などに住むディアスポラのオロモ活動家の役割は極めて重要である。
カナダを拠点に活動するエチオピア人ジャーナリストのゼカリアス・ゼラレムは、ケーローが、他の地域と比較して圧倒的な政治勢力を持つことができたのは、ソーシャル・メディアを駆使する有力なソーシャル・メディア活動家のおかげだと、ジャワール・モハメッドの活動の重要性を強調する。ジャワールはミネソタを拠点にするオロミア・メディア・ネットワーク(エチオピアでは活動禁止にされている)の創業者である。彼は、インターネットが使えない今でも、ケーローの声を拡散し続けている。
「(ジャワール)は政治的な分析とアドバイスをくれる」とハイレは説明する。「彼は政府内部の情報にもアクセスすることができ、それをケーローに知らせてくれる。我々はそれを分析し、いかに動くかを決定している」。
「ジャワールが抗議活動を遠隔操作している」という噂がエチオピア国内に広がっているが、ハイレとアバイエはそれを否定している。
ハイレは「ケーローはサッカーチームのようなものだ。ジャワールはゴールキーパーで、サポートしたり、アドバイスをしたりする。我々はストライカーなんだ」という。
今回の非常事態の宣言は、アダーマやその他のオロミア州で活動する多くのケーローを憤慨させた。非常事態宣言は非情であり、抗議活動の勢いを反転させるものだと捉える人々が多かった。
アナリストは、ケーローの更なる抑圧は平和的な政治活動を過激な暴力的活動に変えてしまう可能性がある、と懸念している。
地方行政官も含めた政府関係者は、民族を標的にした攻撃、特にエチオピアの人口の6%程度の人口で政治と経済活動を占有しているティグレ人への攻撃が激化することを恐れている。
昨年の終わりから、中央政府軍が大学のキャンパスに配備されている。先月は、民族間紛争に似た抗議活動が、いくつも生じていたと数名のレポーターは報告している。
アダーマのビジネスマンであり活動家でもあるジビル・アンマーはアダーマでの抗議活動を平和的な活動として維持することに労力を割いているという。感情に任せて、ものを壊したがったり、オロモ人以外の人々を攻撃したがる若者を落ち着かせる努力をしているという。
「私は、未熟な若者が感情で自由を得るための活動を危険なものに変えてしまうことを心配している」。
ゲルバもまた、民族紛争などの暴力に対して不安を抱いている。
「エチオピア中でティグレ人がターゲットにされることは明らかだ。私が今、最も気になっていることであり、なんとかしなければいけないと思っている」。
数日後にEPRDF(エチオピア人民革命民主戦線)が新しい首相を選ぶが、多くの人々は首相が、現在の連立与党の一党であるオロモ人民民主機構(OPDO:Oromo People’s Democratic Organisation)から選ばれることを祈っている。
首相がOPDOから選ばれることで、ケーローの活動を少なくとも、短期間は落ち着かせることができるだろう。しかし、彼らの怒りを鎮めるには十分ではないはずだ。
ハイレはこういう。
「我々は結婚したら、ケーローをやめなければいけない。でも、私は、我々が自由を手に入れるまでは、結婚することはないだろう」。
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