エチオピアがわかる本:ランボーとアフリカの8枚の写真

2020年11月17日

著者の鈴村和成さんは横浜市立大学の名誉教授。

フランス文学の研究者で、ランボーを専門としている方です。

ウィキペディアによると、1991年のアルチュール・ランボー没後100年には、写真家の大島洋氏とともにランボー紀行を行い、アデン、カイロ、ラルナカなどを歴訪したとか。

その後もランボーゆかりの土地を訪ねる旅を続け、この『ランボーとアフリカの8枚の写真』を執筆したようです。

ご存知の方は意外と少ないのかもしれないので少し解説をいたしますと、ランボーは1880年ごろからイエメンとエチオピアを行き来する貿易商として働いています。

そして、1856年ごろからエチオピアのショア王、メネリク2世に武器を売るために隊商を編成したりしています。

ということで、晩年はエチオピアで武器商人として活動していたわけです。

ですので、ランボーとアフリカというと基本的にはエチオピアの話になるわけです。

さて、著者はこの本をメタフィクションと呼んでいます。

架空の物語をあえて、「これはフィクションですよ」と言うような手法を使った小説ということです。

しかし、この小説の中には事実もあるので、著者がメタフィクションとして扱うのは、本当と嘘(フィクション)が混じっているので、全てを本当だと思って読まないようにね、と訴えているようにも思います。

というのも、著者がこれまで行ってきたランボー研究の事実を小説に仕立てて、根拠のない著者の推測の域を出ない、学術書には書くことができない部分をフィクションで埋めているという印象を受けるからです。

おそらく著者がフィールドで聞き取ったものの、事実として証明できない内容がフィクションとして書かれているように思えます。

中身はというと、ミステリアスにうまく語られているなと思いました。フィクションとは言いながらも、ランボーの私生活にも迫っており、興味深く読むことができます。
本書で特に強調されるのは、ランボーの女性関係でした。
より人間的なランボー像が想像(創造?)される興味深い内容でした。